乳がん
乳がんとは
乳がんは乳房にできる悪性腫瘍で、日本人の12人に1人が乳がんと診断されています。※1現在もなお、患者数は増加傾向にあり、40歳代後半から50歳代にピークを迎えます。また男性にも発生する可能性はありますが稀なケースです。そのうち約90%は乳管(母乳の通り道)から発生し、「乳管がん」と呼ばれます。残りの約10%が小葉(母乳を産出する場所)から発生し、「小葉がん」と呼ばれます。早期に発見の場合は、90%以上は治ります。乳がんは、しこりとして見つかる前に、乳房の周りのリンパ節や、骨、肺、肝臓、脳などに転移して見つかることがあります。
※1人口動態統計2015年(厚生労働省大臣官房統計情報部編)
発生要因
乳がんは、女性ホルモンのエストロゲンという物質が関与していることが知られています。初潮が早い、閉経が遅い、初産年齢が遅いまたは高齢で未産、経口避妊薬の使用や閉経後の女性ホルモン補充療法など、エストロゲンにさらされる期間が長いことが乳がんにかかりやすい条件として挙げられます。あるいは、脂肪組織でエストロゲンがつくられるため、高脂肪食、肥満なども関与しています。もともと欧米に多かった乳がんが日本で増えているのは、ライフスタイルや食生活の欧米化が大きく影響していると考えられます。がんは未解明の部分が多い病気で、まだ完全に解き明かされていません。遺伝などの先天的な体質や、生活習慣などが複雑に絡み合って発症する場合が多いと考えられています。
症状
代表的な症状は、乳房にできるしこりです。その他に痛みや赤みが挙げられます。さらに目に見える変化としては、乳頭部分のただれや湿疹、乳頭からの異常分泌が見られることもあります。症状が進行するとがんの周辺の組織がひきつれて、乳房や乳頭が変形することもあります。乳がんと似た症状に乳腺症や乳腺炎などがありますが、自分で判断せずに、しこりや痛みを感じた場合は医師に相談しましょう。
検査・診断
マンモグラフィ、(トモシンセシス)
乳房専用のX線撮影装置で、乳がんの早期発見に欠かせない最も有効な画像診断の1つです。乳がんの初期症状である石灰化や乳腺の全体像をとらえやすい一方で、検査の方法上痛みを伴うことがあり、年齢・乳腺量の個人差により、詳細な診断ができないことがあります。また、被曝するため妊娠中や疑いがある場合は検査不能です。
乳房超音波(エコー)、エラストグラフィ
被曝がないため妊娠中でも検査可能です。さらに、痛みを伴わないため、比較的受けやすい検査で、小さなしこりやしこりの質的診断をしやすいです。ですが、がん以外の良性腫瘍の所見も見つかりやすく、再検査となる可能性が高いです。また、施行者の技量に依存する部分が大きいというデメリットがあります。
穿刺吸引細胞診、分泌物細胞診 組織診
乳がん検診を受けて「要精密検査」だった場合に行われる場合が多いです。病変部位をを採取して診断をする方法です。
治療方法
外科的治療(手術)
乳房部分切除術(乳房温存手術)
がんの大きさが3㎝以下、検査でがんが広範囲に広がっていないことが確認された場合に、乳房の一部のみを切り取り乳房のふくらみや乳首を残す方法です。術後は、がんが残っている場合があるので放射線をあてるのが一般的です。
乳房切除術
がんの大きさが3㎝以上や3㎝以下でも周囲に広がっている場合に、内側の筋肉は残して、乳房全部をがんとともに摘出する手術です。しかし、近年では自分の組織(背中の脂肪など)やインプラントを挿入して乳房の形を再建できるようになりつつあります。
化学療法
ホルモン療法
乳がんの特徴的な治療法で、要因である女性ホルモン(エストロゲン)を産出したり、受容する細胞に対して作用する薬剤を使用します。 この治療方法は、がんを直接的に退治する抗がん剤に比べると副作用は穏やかです。主な副作用は、発汗や、めまい、不眠、体重増加、骨量の低下などがあげられる。
抗がん剤
ある程度決まった投与量や間隔でいくつかの薬を組み合わせて使うことが多く、ほとんどが点滴で投与されます。
分子標的治療
がん細胞は正常細胞とは違い際限なく増殖し続けますが、増殖するのに必要な特有の物質があり、その中でも特定のたんぱく質をターゲットとして細胞増殖に関わる分子を阻害することで抗がん作用を示すのが分子標的薬です。がん細胞のみを標的として働くので、従来の抗がん剤と比較して副作用が少ないことが特徴です。
放射線療法
乳がんでは、乳房部分切除術の場合に温存した乳房とリンパ節再発の危険性を低くするために行われる傾向にあります。