子宮がん

子宮がんとは

 子宮のがんは、子宮頸がんと子宮体がん(子宮内膜がん)に分けられます。子宮体がんは子宮内膜がんとも呼ばれるように、胎児を育てる子宮の内側にある、子宮内膜から発生するがんです。一方、子宮頸部や頸管の上皮から発生したがんが、子宮頸がんです。まれに子宮の筋肉の層から子宮肉腫が発生しますが、これは、子宮体がんとはまったく違う病気です。

発生要因

 子宮頸がんの発生には、その多くにヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染が関連しています。HPVは、性交渉で感染することが知られているウイルスです。子宮頸がんの患者さんの90%以上からHPVが検出されることが知られています。HPV感染そのものはまれではなく、感染しても、多くの場合、症状のないうちにHPVが排除されると考えられています。HPVが排除されず感染が続くと、一部に子宮頸がんの前がん病変や子宮頸がんが発生すると考えられています。また喫煙も、子宮頸がんの危険因子であることがわかっています。

 また、子宮体がんは、エストロゲンという女性ホルモンの刺激が長期間続くことが原因で発生する場合と、エストロゲンとは関係ない原因で発生する場合がありますが、約8割はエストロゲンの長期的な刺激と関連していると考えられています。エストロゲンが関係していると考えられる子宮体がんに関しては、肥満、閉経が遅い、出産経験がないなどの場合に、発症のリスクが高くなることがわかっています。また、乳がんの治療でタモキシフェンという薬剤を投与されていたり、更年期障害の治療でエストロゲンの補充療法を受けていたりする場合も、子宮体がんのリスクが高くなるとされています。

症状

 子宮頸がんは基本的に、初期症状がないとされています。そのためがんが進行するまで気づかないというケースが多いことが特徴です。子宮頸がんは、がんになる前の状態、細胞の「異形成」という前がん状態の時期があります。この時には自覚症状がまったくなく、初期の段階で子宮頸がんが発見できた人は、子宮頸がん検診などの検査を受けたことによって発見できた、ということが非常に多いです。

 また、子宮体がんの主症状は出血であり、子宮体がんの患者の約90%に不正性器出血が見られます。真っ赤な出血だけではなく、「おりものに血が混じっている程度」であることもあります。特に閉経後に少量の出血が長く続く場合には、注意が必要です。

他にも排尿痛や排尿困難、性交時痛、骨盤領域の痛みなどの症状が見られることがあります。また、おりものの性状が水様性、粘液性、血性(褐色)、悪臭がする、なども症状もみられることがあります。

検査・診断

子宮頸がんおよび子宮体がんの検査・診断では次の方法が用いられます。

・細胞診

子宮の入り口付近を綿棒、ブラシ、またはヘラのようなものでこすって細胞を取り、顕微鏡で正常な細胞かどうかを確認します。通常、痛みは軽いです。

・組織診

細胞診で異常があった場合は、疑わしい部分から小さな組織を切り取って顕微鏡で診断(組織診)します。子宮頸がんであることの確定診断に用います。痛みを感じたり、出血することがあります。

・コルポスコープ診

コルポスコープという拡大鏡で子宮頸部の粘膜表面を拡大して細かい部分を観察します。通常、組織を採取する際にはコルポスコープで異常が疑われる部位に狙いを定めて採取します。

・超音波(エコー)検査

超音波を体の表面にあて、臓器から返ってくる反射の様子を画像にする検査です。痛みもなく放射線の被曝もないです。膣の中から超音波をあてて調べる場合もあります。子宮頸がんの性状をみたり、腫瘍と周囲の臓器との位置関係や他の臓器やリンパ節への転移の有無を調べます。

・CT、MRI検査

CTは、Ⅹ線を使って体の内部(横断面)を描き出し、治療の前にがんの性質や分布、転移や周囲の臓器への広がりを調べます。MRIは磁気を使った検査です。CTやMRIは、肺、肝臓などの遠隔臓器への転移の有無、リンパ節転移の診断、周囲臓器への浸潤の程度の診断に威力を発揮します。造影剤を使用する場合、アレルギーが起こることがありますので、以前に造影剤のアレルギーの経験のある人は医師に申し出る必要があります。

 

治療方法

外科的治療(手術)

子宮頸がんの手術には、大きく4つの術式があります。がんのある子宮頸部の組織を円錐(えんすい)状に切除する方法(円錐切除術)や、子宮を切除する単純子宮全摘出術、子宮と腟、基靭帯(きじんたい)の一部を切除する準広汎(じゅんこうはん)子宮全摘出術や、子宮・腟の一部や基靭帯、さらにリンパ節を取り除く広汎子宮全摘出術などがあります。

<円錐切除術>

がん化していることが確認された子宮頸部の組織を、円錐状にくり抜くように切除します。開腹手術ではなく、膣側からの手術となります。

<単純子宮全摘術>

子宮頸部から子宮全体の部分のみを切除する手術です。膣と子宮の接合部分から奥側を切除しますので、膣はそのまま残ります。

<準広汎(じゅんこうはん)子宮全摘出術>

子宮(子宮頸部から子宮全体まで)と腟、基靭帯(きじんたい:骨盤へとつながる、子宮を支えている太い靭帯)の一部を切除します。

<広汎(こうはん)子宮全摘出術>

準広汎子宮全摘出術に加え、腹腔内にあるリンパ節の郭清も行います。

子宮体がんの外科的療法は、子宮体がんの最も一般的な治療です。手術によりがんを取り除くと同時に、病気の広がりを正確に診断し、放射線治療や化学療法などを追加するかどうか判断します。

子宮体がんでは、早期の場合手術をしないでホルモン療法を行うこともありますが、多くの場合は、病期によって下記のいずれかの手術の方法(術式)を選択します。術式の違いは、切除する範囲の違いで、病期が進むと切除する範囲を広げなくてはなりません。しかし、切除範囲を広げると、手術による障害が起こります。この2つの点を考慮して適切な術式を選択します。

手術には、子宮だけを摘出する単純子宮全摘出術と卵巣・卵管の切除を組み合わせる方法、子宮と卵巣・卵管のまわりを広めに切除する広汎(こうはん)子宮全摘出術、これら2つの中間となる準広汎子宮全摘出術などがあります。

化学療法

子宮頸がんに対する化学療法は主に、以下のような場合で適応となります。

  • 遠隔の組織への転移がある場合
  • 子宮頸がんが再発した場合

子宮体がんに対する抗がん剤による治療は、手術ができない場合や、再発の危険性を減らす目的で手術後に行う場合、あるいはがんが再発した場合に行います。手術後に、高リスクと判定された患者さんに行うと、再発の危険性を減らす効果があることがわかっています。

放射線療法

放射線治療には、高エネルギーのX線やガンマ線でがん細胞を傷つけ、がんを小さくする効果があります。放射線を体の外から照射する方法(外部照射)と、腟を通して子宮頸部のがんのある部分(内部)に照射する方法(腔内[くうない]照射)があります。放射線治療は、がんの根治を目的として行う場合と、手術後に補助的に行う場合があります。いずれの場合にも、子宮頸がんに対する放射線治療については、化学療法(抗がん剤治療)と併用した同時化学放射線治療が、放射線治療単独よりも有効性が高いことが証明されてきています。

ホルモン療法

ホルモン療法では、がんの増殖を抑えるために黄体ホルモン剤を投与します。手術をしない段階の診断で、子宮内膜異型増殖症もしくはI期であり、子宮を摘出しないで治療したいと希望する若年の女性の場合に選択されることがあります。がんの病巣を含む子宮内膜を全て掻爬(そうは)する治療と組み合わせて行います。子宮を残すということによる再発のリスクや、ホルモン療法による副作用のリスクなどを考慮する必要があります。